私が、母を見送ったのは19年前のことになります。
母は、7年間の闘病生活を送り、最期はホスピスを取り入れている病院に入院し、延命治療は行うことなく別れの時までの残り少ない時間を家族でゆっくりと過ごすことを選択しました。
その頃既にアロマセラピーの知識があった私は、お医者さまからの許可をいただき、エッセンシャルオイルを垂らしたお湯でタオルを絞り、体を拭いてあげたり、床ずれができてしまわぬように優しくオイルトリートメントを施したりしていました。
母はとても気持ちよさそうにトリートメントを受けてくれていました。
ある日、私が帰ろうとした時、朦朧とする意識の中、病人とは思えないほどの力強さで私の手を握り「ありがとう」と笑顔で言ってくれました。私も涙を堪えながら「ありがとう」と伝えました。
それが母と交わした最後の言葉でした。

母との別れはとても辛いものではありましたが、最期の時を家族と共に過ごし、母にとっても残された私たち家族にとっても、とても幸せな時間であったと思っています。
「お互いがんばったよね。」という全力を尽くしたという思いがあり、お別れの悲しさに押し潰されることはなく、逆に満たされた気持ちで母を見送ることができました。

この経験から、患者さまには音と香りを使った安らぎをもたらすアロマ音叉®️セラピーで、最期の時を「人生色々あったけれど、幸せだった。」と思い残すことなく旅立っていけるように、またご家族さまには満たされた気持ちで見送ることができるようなお手伝いをしたいと思うようになりました。

看取られる人も、看取る人も最期に「ありがとう」と心から言い合える状態でこの世から送り出してあげたい。
その気持ちからターミナルケアに携わらせていただいています。